贈与税の仕組み

贈与税は、その年に財産の贈与を受けた個人は、その贈与を受けた財産について贈与税の申告をしなければなりません。

1. 暦年課税

1年間に贈与を受けた財産の合計額を基に計算する方法です。

その財産の合計額が基礎控除額(110万円)を超える場合には、贈与税の申告が必要になります。

(1)一般税率

直系尊属(祖父母や父母)以外の贈与者から財産の贈与を受けた場合や受贈者が贈与の年の1月1日において20未満である場合に適用される税率です。 一般税率を適用する財産を「一般贈与財産」といいます。

(2)特例税率

直系尊属である贈与者から財産の贈与を受け、 受贈者が贈与の年の1月1日において20歳以上である場合の税率です。 特例税率を適用する財産を「特例贈与財産」といいます。

贈与税の速算表と早見表


2. 相続時精算課税

この制度は、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対して、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択した年分以降全てこの制度が適用され、暦年課税(一般の贈与)への変更はできません。

この制度を選択した贈与者である父母や祖父母が死亡した時の相続税の計算上、この制度を適用した贈与財産の価額を相続財産に加算して、相続税額を計算います。

1 適用対象者

贈与者贈与をした年の1月1日において60歳以上の者(父母や祖父母)であると。

受贈者贈与を受けた年の1月1日において20歳以上で、かつ贈与を受けた時において贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫であること。

2 税額の計算

相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以降、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。

その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特例控除を控除している場合は、残額が限度額になります)を控除した後の金額に一律20%の税率を乗じて算出します。

その制度を選択した受贈者が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計価額から暦年課税の基礎控除額100万円を控除し、贈与税額を計算します。

3 適用手続

相続税精算課税を選択しようとする受遺者(子又は孫)は、 その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書提出期限)までに納税地の所轄税務署長に「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出することが必要です。


3. 贈与税の申告書の提出期間と提出先

贈与をした年の翌年の2月1日から3月15日になります。

贈与税の申告書は、受贈者の住所地の所轄税務署長に提出しなければなりません。


4. 贈与税の納付

贈与をした年の翌年の2月1日から3月15日までになります。

なお、納める贈与税額は、それぞれの課税方式(暦年課税・相続時精算課税)に区別して計算した額の合計額となります。


5. 直系尊属からの教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税(教育資金の非課税)

制度の概要

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、個人(30歳未満の方に限ります。以下「受贈者」といいます。)が、教育資金に充てるため、金融機関との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など)から①信託受益権を付与された場合、②書面による贈与により取得した金銭を銀行などに預け入れをした場合または③書面による贈与により取得した金銭で証券会社等で有価証券を購入した場合には、これらの信託受益権、金銭または金銭等の価額のうち1500万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。

その後、受贈者が30歳に達するなどにより、教育資金口座に係る契約が終了した場合に、非課税拠出額から教育資金支出額(学校など以外に支払う金銭については、500万を限度とします。)を控除した残額があるときは、この残額がその契約が終了した日の属する年に贈与があったこととされます。


6. 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税(結婚・子育て資金の非課税)

制度の概要

平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、個人(20歳以上50歳未満の方に限ります。以下「受贈者」といいます。)が、結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属(父母や祖父母など。以下おいて「贈与者」といいます。)から①信託受益権を付与された場合、②書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預け入れをした場合又は③書面のよる贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には、これらの信託受益権、金銭または金銭等の価額のうち1000万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して結婚・子育て資金非課税資金申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。

契約期間中に贈与者が死亡した場合に、死亡日における非課税拠出額から結婚・子育資金支出額(結婚に際して支払う金銭については、300万を限度とします。)を控除した残額(以下「管理残額」といいます。)を、贈与者から相続等により取得したものとします。

その後、受贈者が50歳に達する等により、結婚・子育て資金口座に係る契約が終了した場合には、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除(管理残額がある場合には、管理残額も控除します。)した残額がある時は、その残額はその契約が終了した日の属する年に贈与があったこととされます。


7. 贈与税の配偶者控除の特例

(1)特例の概要

婚姻期間が20年以上である配偶者から、①居住用不動産の贈与を受けた場合又は②金銭の贈与を受けたその金銭で居住用不動産を取得した場合で、①及び②の場合ともそれぞれの贈与を受けた年の翌年3月15日までにその居住用不動産を受贈者の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みであるときは、基礎控除額(110万円)のほかに、贈与された居住用不動産の価額と贈与を受けた金銭のうち居住用不動産の取得に充てた部分の金額との合計額から2,000万円(その合計額が2,000万円に満たないときにはその合計額)を控除することができます。

(2)適用要件

この特例の適用を受けるためには、次の要件のいずれも該当する必要があります。

要件
贈与者は、婚姻の届出をした日から贈与を受けた日までの期間が20年以上である(受贈者の)配偶者であること。 贈与を受けた財産は、国内にある居住用不動産又は国内にある居住用不動産の取得に充てるための金銭であること。 2の居住用不動産に現在居住している又は贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住する見込みであり、かつ、今後引き続きこの居住用不動産に居住する予定であること。 過去に今回の贈与者からの贈与について、この特例の適用を受けたことがないこと。 

贈与者及び贈与を受けた財産等の要件

(3)申告等の手続

この特例は、贈与税の申告書等に、この特例の適用により控除を受ける金額(配偶者控除額)その他必要な事項を記載するとともに、必要な添付書類提出した場合に限り、その適用を受けることができます。

要件
1. 受贈者の戸籍の謄本又は妙本(贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成されたものに限ります。) 
2. 受贈者の戸籍の附票の写し(贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成されたものに限ります。) 
3. 控除の対象となった居住用不動産に関する登記事項証明書 
4. 受贈者の住民票の写し(控除の対象となった居住用不動産を居住の用に供した日以後に作成されたものに限ります。) 

添付書類


8. 住宅取得等資金の非課税

(1)特例の概要

平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、 自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築若しくは取得 または増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、 一定の要件を満たすときは、次のイ又はロの表の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。

受贈者ごとの非課税限度額

イ 下記ロ以外の場合

住宅用の家屋の取得等に係る契約の締結日省エネ等住宅左記以外の住宅
~平成27年12月31日1,500万円1,000万円
平成28年1月1日~平成32年32月31日1,200万円700万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日1,000万円500万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日800万円300万円

ロ 住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税の税率が10%である場合

住宅用の家屋の取得等に係る契約の締結日省エネ等住宅左記以外の住宅
平成31年4月1日~平成32年3月31日3,000万円2,500万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日1,500万円1,000万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日1,200万円700万円

注 省エネ等住宅とは、省エネ等基準(①断熱等性能等級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上相当であること、②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上若しくは免震建築物であること又は③高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であることをいいます。)に適合する住宅用の家屋であることにつき、一定の書類により証明されたものをいいます。

住宅取得等資金の非課税の適用後の残額には、暦年課税にあっては基礎控除(110万円)を適用することができ、また、相続時精算課税にあっては特別控除(2,500万円)を適用することができます。

なお、相続時精算課税の適用は、原則として、父母や祖父母からの贈与に限られます。

(2)適用要件

イ 受贈者の要件

要件
1. 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。
(注)配偶者の父母(又は祖父母)は直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。 
2. 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。
3. 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。 
4. 平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。(平成28年分の場合) 
5. 自己の配偶者、親族などの一定の特別関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又は、これらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。 
6. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充て住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築等をすること。
 (注)受贈者が「住宅用の家屋」を所有する(共有特分を有する場合も含まれます。)ことにならない場合は、この特例の適用を受けることはできません。 
7. 贈与を受けた時に日本国内に住宅を有していること。
 (注)贈与を受けた時に日本国内に所有を有しない人であっても、次の①又は②いずれかに該当する場合は対象となります。
    ①贈与を受けた時に受贈者が日本国籍を有しており、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有していたこと。
    ②贈与を受けた時に受贈者が日本国籍を有していないが、贈与者がその贈与の時に日本国内に住所を有していたこと。 
8. 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。 (注)贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用を受けることはできませんので修正申告が必要になります。 

ロ 住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築等の要件

「住宅用の家屋の新築」には、その新築とともにするその敷地のように供される土地等又は住宅の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含み、「住宅用の家屋の取得又は増改築等」には、その住宅の取得又は増改築等とともにするその敷地の用に供される土地等の取得を含みます。 また、対象となる住宅用の家屋は日本国内にあるものに限られます。


A 新築又は取得の場合の要件

要件
1. 新築又は取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。
2. 取得した住宅が次のいずれかに該当すること。
①建築後使用されたことのない住宅用の家屋
②建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの
 (注)耐火建築物とは、登記簿に記録された家屋の構造が鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などのものをいいます。
③建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により証明されたもの
④上記②又は③のいずれにも該当しない建築後使用されたことのある住宅用の家 屋で、その住宅用の家屋の取得の日までに同日以後その住宅用の家屋の耐震改修 を行うことにつき、次に掲げる申請書等に基づいて都道府県知事などに申請をし かつ、翌年の3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき一定の書類により証明がされたもの 

B 増改築等の場合の要件

要件
1. 増改築等後の住宅用家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。 
2. 増改築等に係る工事が、自己が所有し、かつ居住している家屋に対して行われたもので、一定の工事に該当することについての一定の書類により証明されたものであること。 
3. 増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること。 


9. 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例

(1)特例の概要

平成15年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母又は祖父母からの贈与により、自己の居住のように供する住宅用の家屋の新築惜しくは取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合で、一定の要件を満たすときには、贈与者がその贈与の年の1月1日において60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。

(2)適用概要

この特例の適用を受けるには、次の要件のいずれにも該当する必要があります。

イ 受贈者の要件

次の要件のいずれかに該当するほか 「住宅取得等資金の非課税」の「受贈者の要件」の2、5、6、7及び8の要件のいずれにも該当する必要があります。

要件
1. 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人であること。 
2. 贈与を受けた時に贈与者の孫であること。 

ロ 住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築等の要件

「住宅用の家屋の新築」には、その新築とともにするその敷地の用に供される土地等又は住宅の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含み、「住宅用の家屋の取得又は増改築等」には、その住宅の取得又は増改築等とともにするその敷地の用に供される土地等の取得を含みます。

また、対象となる住宅用の家屋は日本国内にあるものに限られます。


A 新築または取得の場合の要件

次の要件のほか「住宅取得等資金の非課税」の「ロ 住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築等の要件」「A 新築又は取得の場合の要件」の2要件に該当する必要があります。

要件
新築又は取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

B 増改築等の場合の要件

次の要件のほか「住宅取得等資金の非課税」の「ロ 住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築の要件」の「B 増改築等の場合の要件」の2及び3の要件に該当する必要があります。

要件
増改築等後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以上で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

(注)「新築」には、贈与を受けた年の翌年3月15日において屋根(その骨組みを含みます。)を有し、土地に定着した建造物として認められるとき以後の状態にあるものが含まれます。

また、「増改築等」には、贈与を受けた年の翌年3月15日において増築又は改築部分の屋根(その骨組みを含みます。)を有し、既存の家屋と一体となって土地に定着した建造物として認められるとき以後の状態にあるものが含まれます。

なお、「取得」の場合には、これらの状態にあるものが含まれませんので、贈与を受けた住宅取得等のための金銭を建物住宅又は分譲マンションの取得の対価に充てている場合にあっても、贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその引渡しを受けていなければ、この特例の適用を受けることはできません。